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越後角太夫の古浄瑠璃への試み3(ハムレット・其の三) [越後角太夫の古浄瑠璃への試み]

越後角太夫の古浄瑠璃への試み3(ハムレット・其の三)

 

前回、7月25日の記事「越後角太夫の古浄瑠璃への試み3(ハムレット・其の二)」においては作曲や演奏についてかなり専門的なお話だったかもしれませんが、私なりの考えを説明させて頂きました。

今日は、ハムレットの稽古の段階での私の演奏や考え方の変化についてお話ししたいと思います。

以前にもお話ししたように、やはりこういった試みや経験は、なにしろ私にとって初めてだった為、実際に役者さん達の演技と一緒になった時に、私の演奏が演出や演技の邪魔にならないか、そしてハムレットのお芝居全体の中で私自身の存在や私の演奏が効果を本当に高めることが出来ているのか、また音楽のパートナーでピアニストの横山道子さんとの調和はどうなのか、ということが非常に大きな懸念でした。はっきり言って自信は全くなく、稽古が始まった段階でも未経験な私は非常に不安でした。これはこれまで私が文楽や義太夫という特殊な世界だけでしか生きてこなかったということから来るものだと思います。

しばらく稽古をしていて不安に耐えきれず、演出家の栗田さんに恐る恐る、「使い物になるでしょうか?」とお聞きし、またいつも稽古に最初から最後まで付き合って下さる制作担当の星野睦さんに、「おかしいことはないでしょうか?」とお聞きしてみました。その返答は栗田さんの場合は、「素晴らしい!」と一言だけ、星野さんの場合は、「皆さん感激していますよ。全く大丈夫です」とのことでした。お二人のお答に少しは安堵したものの、でもやはり半信半疑な状態はずっと続きました。こういったどんな場合にも安心できない習性を私はずっと経験してきましたが、芸人としては普通なのかも知れません。

最終的にもう開き直って、なり振り構わず(この言葉、私の師匠・鶴澤重造<つるさわじゅうぞう>がよく使っていました)腹をくくって思い切ってやる以外ないと決めたのは初めて翻訳者の松岡和子さんが東京から来て下さり、りゅーとぴあの能楽堂での稽古を見学して下さった時のことでした。本番前までに数回稽古を見学して下さいましたが、その最初がいつだったか記憶が定かではないのですが、10月下旬か11月初旬だったような気がしますが、私の記憶は全くと言ってよいほど怪しいです。(どなたかスタッフの方で覚えていたら教えて下さい)

松岡先生は、その時に通し稽古が終った後私が能楽堂の楽屋で三味線を片付けていると、客席から私のところへ飛んで来られました。表情は嬉々としておられ弾むような感じで私の前に座られ、

「淺造さん、良かったですよ。私の翻訳したシェークスピアのひとつひとつの言葉が、『僕こんなに元気で嬉しくって嬉しくって飛び跳ねてるよ!』て言ってましたよ。淺造の浄瑠璃のお蔭で栗田さんの演出がすごく生きてきて、こんな風に私の翻訳が生き生きと生かされるなんてとても嬉しいです」

と言って下さいました。先生の詩的な褒め言葉に私もなにかとても嬉しくなり、

「先生にそう言って頂いて感激です。そのように言って頂き、私にとって大きな励みになります」

とお返事しました。

その後栗田さんを始めスタッフの皆と一緒に居酒屋で松岡先生を囲んで、シェークスピアのお話しやお芝居の話をお聞きしとても有意義でした。

先生のお言葉に励まされ、自信とは勿論違いますが、私の考え方は基本的にはどうも間違っていないようだと感じ、それ以降少し演奏が変わって来たかもしれませんでした。稽古の時には極力テープに録音して聴き直し、スタッフの意見も聞き微調整を繰り返しました。この時点で私が一番腐心したことは、劇中の王と劇中の王妃の人物表現や変わり目、また一本調子にならないようにすること、詞(ことば)に不鮮明な箇所がないように、ということでした。

一方私が弾き語りを担当する、人形振りの三人の女性たちの振付は、文楽人形や歌舞伎、日本舞踊に詳しい田巻明恒さんが振り付けましたが、私の曲に合うよう考えて振りつけて下さり、簡潔で分かり易い振付でとても良かったと思います。その後田巻さんはお忙しくて稽古に参加できない時には、栗田さんの意向と指示を受け、ピアニストの横山道子さんが細かい部分を作っていったようですし、三人の女性たちも大変良く自習や研究をしたと思います。間合いやテンポ、きっかけなど自主的に積極的に私に質問していました。

また栗田さんの演出が日々変わっていきその変化が大きい時も小さい時も私にとっては新鮮で面白く、毎日が楽しみでした。栗田さんの手腕と役者さん達の掌握術に感心し、ひとつの芝居は、文楽と違い、こうやって作っていくんだ、と感心することしきりでした。

こんな風にスタッフの皆さんに未経験な私を引っ張って頂き、初日に向けて稽古が進んで行きました。

 

今日掲載する写真は、本来なら稽古風景でもあればよいのですが残念ながらないので舞台写真を載せます。

舞台中央が、ハムレット役の河内大和君、扇を使っているのが劇中の王の大山真絵子さん、舞台前方の後向きが劇中の王妃の永宝千晶さん、後方の後姿がちょっと見えているだけは磯野知世さんです。皆若くて覚えるのも早く動作も機敏で羨ましいけれど、知世ちゃんは中学生、驚きました。因みにオフィーリア役の町屋三咲さんも中学生でした。はっきり言わせて頂くなら、そして誤解を恐れずに言うなら、皆上手い筈はありませんでしたし(百戦錬磨の栗田さんの演技は別格です)、文楽流に言うならば上手い下手を言う段階はまだ数十年先でしょう。この段階で重要なのは向学心、情熱、真摯さ、いかに芸や自分の役を愛するか等々なのではないでしょうか。

いずれにしても私はスタッフの皆さんと共に学び舞台に出演出来たことを幸せを思います。(写真提供は、りゅーとぴあ)

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